嬉野温泉の歴史は古い。8世紀に編纂された肥前国風土記に嬉野温泉と思われる記述があるらしい。江戸時代には佐賀藩が管理する公衆温泉が存在し、長崎街道では珍しい温泉のある宿場町としても栄えた。
嬉泉館(きせんかん)は温泉街から一歩住宅街に入った場所にある。小さな旅館だ。向かい側の駐車場に車を止め、湾曲した階段を上ると玄関となる。奥に続く廊下を進むと受付がある。
旅館の方に「温泉に入りたい」旨を告げる。「今、多いかもしれません。入れなかったらお金はお返ししますから、お風呂をちょっと覗いてみてください。」と言われた。玄関にはたくさんの靴が並んでいたので、宿泊客で混んでいるのだろう。廊下を進み階段を下りると浴室に着く。
なるほど5~6人の先客有り。脱衣所には2つの洗面、21個の脱衣棚、壁には湯の分析表が掲げられている。扉を開けると浴室だ。2槽に分かれた岩風呂だ。
手前の大きい浴槽(3m×3m)の方に入る。熱めだ。でも、慣れれば問題ない。肩まで浸かれる温度だ。供給されているお湯は少ない。源泉の温度が84℃なので、浴槽の温度を踏まえた湯量が注がれているようだ。
源泉の恩恵を受けるには加水せず、量を絞ってでも源泉を注ぐことに拘りがあるようだ。掛け流しだ。湯は無色無臭、ヌルヌルとツルツル感が肌に伝わる。
小さい方の浴槽(1.5m×3m)も熱めだ。わずかな量の湯が供給され湯温が調整されている。大きい浴槽の湯口から飲泉してみる。際立つ味はない。熱いので冷ましてから飲むことになる。
洗い場は手前に4か所、小浴槽の側に2か所、洗い場の湯も温泉だ。大きい浴槽と小さい浴槽の間に傾斜した平らなところがある。その場所に仰向けで寝ている方がいる。ごろ寝に最適な形状だ。次回、試してみよう。
控えめな印象の旅館嬉泉館、嬉野温泉の本来の良さが凝縮された旅館なのかもしれない。
□
嬉泉館 白川源泉
嬉野市嬉野町大字下宿乙2202-18
0954(43)0665 HP
ナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
84℃ PH8.4 掛け流し 無色無臭無味
リンスインシャンプー 石鹸 ドライヤー有り
600円※2019/12/現在
10:30~21:00
2004/3/20
■再訪 2011/3/10


シーボルトの湯の後、久しぶりにお邪魔した。
500円を支払い、浴室へ。
かかり湯で、いきなり、ヌルツル感が身体を包む。こんなにヌルツルしてたかな!と思うほどだ。多分、これが本来の嬉野の湯の力なのかもしれない。やはり、嬉泉館の湯は極上の湯だ。
■再訪 2012/6/23
何も変わることなく、迎えていただいた。それだけで嬉しいつかの間の安らぎだった。
