嬉野温泉 光陽閣

雨がしっとり降る平日の昼下がり、温泉街には傘をさし散策する人々の姿があった。不思議な落ち着きは、保たれた古い建物から醸し出されているのかもしれない。まるで歩くことを誘いかけるようだ。
温泉街の幹線道路から離合もままならぬ通りを抜けていくと、塩田川の岸辺の宿に至る。鉄筋コンクリート造の建物は7階建てだ。広いがひっそりとしたフロントで立ち寄り湯をお願いする。




浴場は最上階の7階にある。エレベーターを下りた場所で靴を脱ぐ。左手が男湯だ。突き当りまで進むと右手が脱衣所だ。木製棚と無料の鍵付き貴重品入れが備わる。貸タオル、髭剃り、ヘアーブラシなど温泉宿ならではのアメニティが揃う。
浴場は右手に洗い場、正面左に浴槽が配置される。左側の窓は透明で眼下には塩田川、左右には茶畑や旅館など視界を遮らず嬉野の風景が手にとるように眺められる。



浴槽の内側には乳白色のタイルが張られている。昭和レトロのデザインが残されている。注がれる湯はほんのり塩素臭、素直な印象の湯だ。濁りのない透明感を持つ。適温の湯は配湯だ。温泉街にある豊玉姫神社参道側の源泉引き湯のようだ。湯口からは十分すぎる湯が注がれているが浴槽を溢れない。脱衣所の張り紙によれば「浴槽、シャワー、洗い場の全てのお湯は源泉100%」と記されている。洗い場にも温泉が引かれている。




浴室の奥には露天風呂が用意されている。平石で組み上げられた浴槽は楕円形だ。湯は熱い。露天ゆえの温度管理だろう。湯口は湯面下にある。露天の魅力は解放感、風景を遮るものは何もないため、内湯と同じく立岩展望台などがある南西方向の風景を楽しむことができる。




湯上り、レンモン水をいただいた。火照った体を冷まし失った水分を補給するのにありがたい心遣いだ。


嬉野温泉 光陽閣
嬉野市嬉野町下宿乙730-5
0954(43)0170 HP
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(嬉野温泉配湯㈱第4-1源泉)
87.9℃
シャンプー類あり ドライヤーあり
内湯 露天
600円
12:00~20:00
2017/10/6

黒髪の森温泉 天童源泉

佐賀県西部、武雄市と有田町にまたがり黒髪山がそびえる。奇岩が山の表情を印象付ける。武雄市山内側の麓に位置するのが黒髪温泉である。浴舎は平屋建てで、至って簡素な造りである。黒髪山の風景を邪魔しない気遣いなのかもしれない。



扉を開け靴を脱ぐ。畳2枚ほどの空間だ。右手の扉を開けると受付がある。菓子などが並べられた棚の先に自販機がある。チケットを購入し受付の方に渡す。奥へ進むとパネルに祐徳温泉グループの温泉施設が紹介されている。パネルの向こう側は畳が敷かれた休憩室である。パネルの右手が女湯、左手が男湯だ。




脱衣所にはコインロッカーが並ぶ。10円玉が必要だ。10円は戻ってくる。良心的だ。扉を開けると浴室だ。

浴槽の淵には洗面器や掛かり湯用の桶が並ぶ。浴槽は緑色の石でデザインされている。年月の重なりで石の色は温泉成分で変化している。浴槽内は茶褐色に変わり、浴槽の外は白っぽく変化している。湯口は鉄パイプで、湯口は湯面下にある。勢いよく湯が噴き出し湯面を揺らす。湯は極薄く茶色を帯びているようだ。手にすくうと鉱物臭似が鼻腔に届く。やや熱めの湯だ。源泉温度は40.8℃だから加温されているようだ。
湯面は浴槽の中で定位置を保ち変化しない。待合コーナーの張り紙にはかけ流しの言葉が使われている。脱衣所の掲示には一部循環していると書かれている。




浴舎入口の隣には足湯がある。100円が必要だ。



施設はこの足湯から始まった。内湯ができた後も足湯は残された。どれほどの利用があるのかはわからないが、足湯を残していることに施設の拘りを感じる。


黒髪の森温泉 天童源泉
武雄市山内町宮野1589-1
ナトリウム-炭酸水素塩泉(低張性弱アルカリ性温泉)
40.8℃
シャンプー類あり ドライヤー有 コインロッカー(10円返却式)
内湯
400円
11:00~19:00
休:水曜日
足湯100円
2017/10/6

古湯温泉 千曲荘

古湯温泉街を形成する宿の集まりの中で白い壁がひときわ印象に残る。玄関に立つと自動扉が開く。
昼下がり、フロントに現れた若い男性に立ち寄り湯の可否を訊ねる。快諾。浴場は2階で、右手の階段を上がり左へ折れる。突き当り右が浴場だ。




脱衣所は4畳ほど。シンプルに木製の棚が備わる。洗面台には綿棒、ドライヤーなどが用意されている。
アルミ製の引き戸を開けると8畳ほどの浴室が現れる。窓には竹編みの目隠しがなされているが、開けられた窓からは川面を渡る心地よい風が迷い込む。洗い場、浴槽の床とも統一されたデザインが用いられている。ベージュ、白、灰色のタイルが明るさを提供しリズムを刻んでいるようだ。




浴槽に満たされているのは無色透明の澄んだ温泉だ。肌をいじめるような印象や臭いはなく、至って素直だ。脱衣所には湯の管理について貼り紙があり、循環装置、塩素系薬剤の使用を知らせている。湯口の隣に蛇口がある。開けてみると温い湯が出てくる。想像だが、源泉ではないかと思われる。口に含むと、甘みとトロミを感じる。源泉は富士町第2源泉(鶴霊泉)と表示があることから、隣接する温泉宿鶴霊泉からの引き湯と思われる。




夏に行くなら源泉温度の低い温泉がいい。ひところ、温い温泉地として古湯温泉がPRされていた。夏に行くのなら、古湯がいい。


古湯温泉 千曲荘
佐賀市富士町古湯878
0952(58)2047 HP
アルカリ性単純温泉
37.2℃
シャンプー類あり ドライヤーあり
内湯
500円
10:00~20:00
2017/8/16

武雄温泉 殿様湯(家族湯)

武雄温泉と呼ばれる温泉地には基本的泉質を異にする二つのエリアがある。国が指定する文化財、楼門が所在する周辺と佐賀県立宇宙科学館が所在する池の内池周辺である。

楼門が構える武雄温泉株式会社には元湯など三つの公衆浴場がある。家族湯も用意されていて、殿様湯、家老湯、鶴、亀、松、桜、つつじがある。訪問時、家族湯は改修中で、殿様湯、家老湯のみが営業中であった。




平日にもかかわらず待つこと40分、殿様湯へ案内された。殿様湯は元湯の浴舎に配置され、入口は浴舎北側にひっそりと構える。扉を開けると土間が続き、その先に紫の暖簾と鍵付きの靴箱が迎える。

左手の狭い階段を上り詰めた右手にあるのが殿様湯の休憩室だ(正面の扉が家老湯)。畳が敷かれた間は広く、宿泊さえできそうだ(もちろん宿泊は不可)。浴室へは畳の間の隅にある扉を開け、その先へ進まなければならない。細い階段を下るとそこが殿様湯である。



脱衣所と浴室は一体化した空間だ。脱衣所には藤の籠が用意され、バンコのような長椅子が置かれている。エアコンで空調は整えられ快適だ。大理石の階段を数段降りれば浴槽だ。
印象的な黒と白の菱形の大理石が目を引く。大理石を触ってみると白と黒で表面処理が異なる。一方の表面はざらつきがあり、一方はなめらかだ。




湯口からは大量の湯が滝のように注がれている。源泉が惜しげもなく注がれている。豪快な眺めだ。当然、浴槽からは大量の湯が木製の淵を越え流れ去る。注がれる湯は熱い。夏場にはつらい温度だ。仕方なく湯口の側にある蛇口から水を出す。湯は極弱い塩味を帯びている。無色透明で肌に滑らかさを残す。無臭だ。個性を有しつつ万人に受け入れられる貴重な湯である。



湯上り、畳が敷かれた休憩室でしばらく休んだ。休憩室をはじめ、浴室、廊下などの造りは古いが落ち着く。可能な限り古来の意匠を保とうと努力されているように感じた。


武雄温泉 殿様湯(家族湯)
武雄市武雄町武雄7425
0954(23)2001
第5号源泉 単純温泉 45.3℃
第6号源泉 単純温泉 49.6℃
シャンプー類あり ドライヤーあり
内湯
3800円/60分(平日:3300円/60分)
10:00~23:00
2017/5/23

余談
武雄温泉楼門から南東へ4㎞ほど、歴史の浅い池の内池周辺の温泉エリアは、市が所有する泉源を引き湯している。国土地理院の地形図を見れば、池の内池の南西300m付近に温泉の印が見て取れる。源泉温度が低いため、各施設は加温して提供している。元湯や殿様湯などと印象も異なり至って素直だ。御船山観光ホテルもこちらの泉源から引き湯している。

古湯温泉 英龍温泉(貸切湯小)

古湯温泉は国道323号バイパスによってアクセスはよくなったが、古湯温泉街には静かな風が吹いていた。
温泉街の中心部から坂道を上がる途中に英龍温泉はある。以前は古湯温泉センターと呼んでいた。温泉街の寂しさとは裏腹に駐車場は満車、賑わっている。玄関ホールには野菜や菓子などが売られている。



受付で貸切湯をお願いする。大と小がある。右手にある自販機でチケットを購入するように指示される。半日休憩のチケット(350円)と貸切湯小・福之湯のチケット(500円)を購入し受付の方に渡す。貸切湯は2階にある。同じ階にある休憩室で10分ほど待つと案内の声がした。




貸切湯は長い年月を経ていないようだ。近年に改修されたのかもしれない。木が壁材に用いられあたたかい印象を与える。脱衣所はL字型でやや狭く感じるがドライヤー、洗面台などが揃い、脱衣場の機能は十分だ。

木製の扉を内側へ開けると浴室だ。3畳間ほどの広さだ。脱衣所などと同様に木が壁に用いられている。床、腰高までの壁には白いタイルが貼られている。アクセントの黒いタイルが印象的だ。





浴槽は家庭用のジャグジーポリで、凝った意匠ではない。湯口は一般的な蛇口で、容易に湯温を調節できる。満たされる湯は無色透明で、手に取ると塩素臭を感じる。口に含むが気に留まる印象はない。肌にまとわりつくようなこともなく、至って素直だ。



湯は利用ごとに全部入れ替えられる。利用前、浴室を出る際には浴槽の栓を抜くように依頼された。


古湯温泉 英龍温泉 貸切湯小
佐賀市富士町古湯835
0952(58)2135
アルカリ性単純温泉
29.3℃(富士町第1源泉・英龍泉)
39.5℃(富士町第4源泉・徐福泉)
シャンプー類あり ドライヤーあり
内湯
貸切湯大 350円×人数+1000円/60分
貸切湯小 350円×人数+500円/60分
9:00~21:30
休:第3火曜日
2016/12/25